〚こんなに遊んでばかり〛日記:240318

 こんなに遊んでばかりいていいのかなぁ、と、ぼんやり思いながら、1日中あそんでいる。だって、ほかに、することないし。お金もない。生きてても良いことはない。でも、面倒くさいしさ。

 昔よりおとなになった気でいるけど、なんも変わってなくて、楽しいことだけやってたい。ぼくは、書くこととか、整理すること、まとめることが趣味だから、ゲームで遊ぶ時は、ただプレイするだけじゃなくて、そこからデータを集めたり、記録を作ったりして遊ぶ。

 やるべきこと他にあるでしょっ、て言われましても、そんなことなさそうに思う。実家にいると。実家にはいつ帰っても同じ時が流れている、今のところは。猫がいるし、テレビがあって、毎日ニュースが流れてる。母さんは毎日パソコンで同じ仕事をし、毎晩一緒にスプラトゥーンをする。いつかえっても、同じ愚痴を聞く。

 起きる。料理をする。トイレに行く。皿と風呂と身体を洗う。洗濯機を回す。お湯を沸かす、お茶を飲む。カーテンを引く。ポテトチップスの袋を開ける。缶チューハイのプルタブを起こす。歯を磨く。眠る。

 ストーブが暖める明るい部屋を、呪いと憂鬱が満たしている。

 大きなものを望んだ先にあるのは、自分の手の中にあるものを大切にしなかったことへの後悔と不幸だ。ただ幸福に生きて死ぬことと違って、不幸はそれなりに甘いものだから、欲しくなることもある。

 疲れていく。

 じんせい、という漠然としたものが広がっている。別に、何も望んではないことに気づく。いや、本当にね。それって薄情なのかも知れない、冷たいのかもしれない。でも、別に、今となってはなにもかも、「仕方がない」ことだと分かっている。

 別に誰のことも邪魔したくはないし、何が何でもと暴れたいような気持ちもない。笑うことがそんなに難しいわけでもない。昔とは違うのかも知れない。

 いずれにしても、憎しみは氷解している。

 ぼくはこれ以上何も望んでいない。なにもかもがこのまま終わるとしても、ぼくはゆるやかに手放すことができるのかもしれない、と思う。

よくつかうショートカットの覚書[メモ]

よく使うショートカットキーのメモ

Windowsで使えるショートカットキーのメモ。すぐ忘れて毎回調べるから。

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サイトカスタマイズの覚書[メモ]

カスタマイズの覚書

 これやりたい→やってみる→すぐやり方忘れる、というのの繰り返しではしょうがないので、調べたことと追加したプラグイン、実装した内容とその場所などを記していくことにします。

目次を入れたい

 記事の冒頭で、見出しを取得して表示するアレ。テーマのJinと同じ開発元で、目次プラグインを配信していたので、ゲット。有効化して、目次を実装。簡単にできました。ひとまずこれで使っていきたいと思います。

プラグイン:Rich Table of Contents

こちらの公式サイトに使い方が書いてあります。

追尾サイドメニュー

スクロール後もついてくるメニューは【ウィジット】の追尾サイドメニューから設定できます。【ウィジット】は、未設定のものは【カスタマイズ】には表示されないので、未設定の場合は管理画面のサイドメニューにある【ウィジット】から編集できます。

高機能な表(テーブル)を入れたい

 標準のテーブルには、フィルターや並び替えの機能がない。
 より高機能なテーブル作成プラグインを探してみた。

プラグイン:tablepress

表を作るプラグイン。無料でもフィルターや並び替えができるが、カスタマイズはCSSを追加して行う必要があり直感的ではない(逆に言えば、CSSが扱えればカスタマイズ性が高い)。表データをインポートできる。

赤光

一人の男が歩いている。
彼は、人殺しだ。
何人も殺した。その数も、顔も覚えていなかった。家族を殺したし、そうでないものも殺した。彼が歩きながら感じていたのは、息も詰まるような憎しみだった。
「みんな、死んじまえ……」
男は呟きながら歩いた。薄汚れたジャンパーの裾に黒く乾燥した血がこびりついていた。
どこからか遠く離れたところで、パトカーのサイレンが鳴り響いていた。信号が変わった。男は赤信号の間に、既に横断歩道を半ばまで歩いていた。クラクションが鳴った。
「煩せぇな……」
男は耳を塞いで歩いた。道路の反対から、はしゃいで走ってきた小学生のうち一人が、ドンッと男にぶつかった。
「あっ……ごめんなさい」
そう呟いて脇を抜けていく子どもが、突然、耐えられないほど憎らしく思えた。思いっきり殴りたいという衝動が男の体を突き動かした。
しかし、子ども達は既に走り去っていた。わざわざ追いかけるのは酷く億劫で、その気にはならなかった。遠のくランドセルから、クレヨンの箱が覗いていた。男は舌打ちし、頭を振りながら向き直るとまた歩き出した。
通り過ぎていく街路樹の下で、人が集まって、募金を呼びかけていた。生き生きと張り切った声が、街によく通っていた。可哀想な子どもたちを助けましょう……協力お願いします!……。男には耳障りだった。何人か足を止めるのを視界の端で無意識にとどめ、舌打ちしていた。
《偽善者が》
男は俯いて歩いた。何も見たくなかった。ぼんやりと霞がかった頭のなかを支配するのは憎悪ばかりで、その炎が何もかもを焼いていた。
その時、道の脇に死んだように転がっていた老人の脚に躓くと、男はバランスを崩して地面に転んだ。うめき声がした。
「邪魔なんだよ!」
男は叫んで立ち上がると、老人を蹴飛ばした。うぅ、と頭を守るように蹲る老人の下にはしみだらけの煤けた段ボールが敷かれていた。男は何度も執拗に蹴り上げた。その薄汚い老人が気に食わなかった。他人の施しで生きている、あんな奴らの施しを生きてのうのうと生きていることが憎らしかった。どれだけ蹴っても気が収まらず、何度も何度も踵を振り下ろした。
「おい、殺す気か!……」
神経質な小さい声が男の背後から聞こえた。
男が動きを止めて振り向くと、道の反対側にスーツ姿の男が立っていた。目が合うと、そそくさと歩き去っていった。何度もちらちらと振り返りながら。
「殺す気……? なわけが、ねぇだろ……」
《こんなやつ、生きてすらないんだ》と男は思った。《お前だって、そう思ってるくせに》足早に去っていく背中を睨みつけた。
老人は気を失っていた。血が段ボールに小さな赤いしみを作っていた。
男はふいに、漂う異臭に気付いた。自分がこんな老人の前に立ち止まっていることすら、忌々しく思え、舌打ちをするとまた歩き出した。
鳩が道の脇へ飛び退いた。
《生きてる価値がない。その証拠に、誰も助けない》
男は激しい苛立ちの炎の中で、そう呟いた。
どこかで鴉が鳴いた。

もしも地獄があるなら、それはこの世界だし、もしも自分が罰されるのなら、それはまさにこの人生だったと男は思っていた。そう思うしかなかった。
彼にとって、愛は神話であり、幸福は偽物だった。
男は誰のことも愛したことがなかったし、誰からも、ほんの一瞬たりとも愛されなかった。少なくともそう思っていた。
男は家族を殺した。親を殺した。そうでない人間も殺した。人はそう簡単には死ななかったが、それでもやっぱり、簡単に死んだ。
殺したかった。皆殺しにしてやりたかった。
男は顔を上げた。雲が流れて太陽が覗き、西日が目を貫いた。たそがれの空が澄んでいた。鴉が横切っていった。何もかもが憎しみの炎にゆらめいた。太陽が憎い、空が憎い。後ろから風が吹いた。風が憎い。視線の先に、古びたビルがあった。非常階段が屋上まで取り付いているのを見た。
風に乗って、パトカーのサイレンの音が男の耳に届いた。ずっと聞こえていた。始めて人を殺したときから、いや、もっと前から、ずっと。鳴り出した踏切の警報がかき消した。《行こう》と男は思った。
黄昏の街を歩いた。
すれ違う人々の姿が視界で揺らいだ。《あいつら、生きるために歩いていやがる》蜃気楼のように、笑い声が耳を劈いた。《全部殺したい》轟音を立てて、電車が線路を走り去った。《あいつら全部だ》子ども達が駆け抜けていった。《この世の全てだ》笑顔が、神話が、偽物が、端から端まで、溢れている。
《全部、なくなればいい》
クレヨンで塗りつぶす。力を込めすぎて、ボキッと折れる。
捨てられた絵の事を思い出した。昔、少年だった頃、彼は赤色が一番好きだった。
《なにもかも、全部》
憎しみは地獄の業火の如く、頭の中を焼き続ける。今はもう、好きなものなんて、何一つなかった。
《消えてしまえばいい》
《こんな世界》
そして――
《こんな自分!》
男は立ち止まった。
ビルは眼の前だった。西日は遮られて、周囲には暗い影が落ちていた。
非常階段の前で、幼い女の子が、座り込んで泣いていた。膝が擦りむけて血が滲んでいた。転んだのだろうと男は思った。少女は、薄汚れたワンピース一枚で、髪も泥で汚れていた。
「邪魔だ……」
男は呟いた。少女はハッと気がついて男の方に顔を向けた。潤んだ目が瞬くと、真っ赤になった頬を涙が滑り落ちた。
その瞬間、男の胸の奥に油でも注いだかのように、激しい憎悪の炎が一層燃え盛った。《どいつもこいつも、死ねばいい!》
男は手を伸ばした。
少女の目が見開かれる。
「え……」
男は少女の腕を引っ張り上げ、立たせた。
「行け」
少女は驚いたように男を見上げた。少女は、痛みも忘れたのか、ただ目を瞬かせていた。不思議そうに、何かを尋ねようとでもしたのか、唇が震えた。
「あっちへ行け」
低く呟くと男は、自分が歩いて来た背後を指さしてから、非常階段の錆びついたチェーンをくぐり、階段を登り始めた。足元がふらついていた。
「あのっ……!」
踊り場のあたりで下から呼び止める声が聞こえ、男は振り向いた。
「ありがとう……」
少女は涙を拭い、泥だらけの頬で、男の目を見上げて微笑みかけた。
男はまた階段を上り始めた。それから、もう二度と下には目を向けなかった。
少女は歩き出した。
サイレンが響く。
燃えるような夕焼けが、空を満たし、やがて、消えた。

作品管理についての覚書[メモ]

作品を管理したい……

 ぼくは分類するのが好きだ。
 番号を割り振ったモノゴトを、これまた番号を割り振った棚にしまい込んでいく。モノゴトには、名前と数字が与えられる。そうすると、モノゴトはコンピューターで扱えるようになる。

 さて、ぼくはじぶんの作品を、どうやって分類すれば良いんだろう。

ひたすら番号を振る

 今のぼくが採用している管理方法。ただし、作品が増えることを見越して、アルファベット1字+数字2桁の3桁で番号を振っている。

 A01からA99、次がB01……C01……と続いていく計算だ。これだと、三桁で約2600番まで振ることができる。数字三桁だと999までなので、それよりは2倍以上多くの作品に番号をふることができる。

 この管理方法の欠点は、長編、掌編、短編などの区別がないことだ。この区別を改めてする場合、どうしたらよいのかというところに問題がある。

作品の長さ別

ぼくの感覚だと、だいたい、

  • 0~4000字――掌編(ショートショート)
  • 4000字~30000字――短編
  • 30000字~100000字――中編
  • 100000字以上――長編

くらいに捉えている。短編と中編を分けるかは――微妙なところだし、ぼく個人としては中編という感覚ではあまり書いたことがない。ただ、長編を書くときに、そのパーツとして中編の規模感を意識することがある。

アイデアを出した段階で、その作品の規模感が直ちに決まるわけではないが、なんとなく「これくらいかな?」という目安を持つことはできる。結局のところ、【起】の部分をどれくらい広げるかで、物語全体の長さが決まってくるように思う。

作品の長さというものは、書こうとするものに対して過不足なく十分でなくてはならない。この感覚は、ぼくとしては難しく、色々書いてみることでしか捉えることが出来ずにいる。

ただ、SSと長編では明らかに試みが異なっている。その試みをぼくなりに整理するなら、だいたいSSは「感覚」的、長編は「歴史」的だと思っている。SSはその短さ故に、積み重ねて語ることは向かない。SSは基本的に「驚き(タウマゼイン的な……)」や切り取った「感情」、「景色」などが作品のコアになる。長編はそれをパーツに取り入れるが、長編の場合、そういった「部分」と「全体」の距離がSSよりも遠い。

長編には部分と全体がある。掌編は、部分が全体となる。そんなイメージである。

長さ別、再整理

結論。制作にあたって作品番号は、これまで通りに振っていこうと思う。
ただし、その作品がどういった作品なのかが決まったとき、本棚に並べるようなやり方で、分けてしまっていくことにしようと思う。ひとつひとつの物語に、最初から名前があるわけではないのだから。名前のないものに、唯一無二の番号を与え、ひとつひとつを大切にして、名前を与え、本棚にしまっていくようにしたい。

〚EGG〛日記:240317

 頭がやけにざわめく。混乱する。感覚が落ち着かない。嵐が吹いている。ただ黙っている。目を閉じている。

 あまり自信を持ちすぎないことだ。驕らないことだ。誇らないことだ。

 そして進むことだ。それがむずかしい。

 ある程度の幻想や過信がないと、何かをやり遂げることは出来ないように思う。……ぼくが小説を書き始めてしまうのは、過信があるからだろうが、それをいつも完成させられないのは、過信が足りないからなんだろう。

 小説を書くなんて行為は、あまり意味のあることと思えない。誰かの役に立ったことがない。褒められたこともない。そんな馬鹿げたことに何時間も何百時間も費やすのだから、やり遂げるには信じなければ無理だ。

 信じる――。

 この物語に、自分の人生を懸ける価値があると、信じることだ。自分の時間を、懸ける価値があると……。

 そして、結局は値しない。

 ぼくの人生は生きるに値するか?

 するさ……だって今、ぼく生きてたんだから。

地下回廊

 

 

 回廊が、長く暗い回廊が続いている。
 地下室への道をぼくは歩いていた。かび臭い通路、生き物の這う気配、滴る雨漏れ、外は嵐だ。
 蜘蛛を踏みつけた。回廊のどこかで、壁を引っ掻くような音がしていた。
 昨日、夢を見た。暗い地の底で、血まみれになった壁、天井、手のひら。不安は、夢になって現れると誰かに聞いたことがある。何度も悪夢に跳ね起きる夜の冷たさ、静けさ、恐ろしさ、そして途方もない長さは、牙も爪もないのにぼくを着実に絞め殺そうとする。夢だったと気づき、ほっとして顔を上げると、天井から吊り下がる何十もの首吊り死体が、窓から吹く夜風に揺れる。吊り縄が首に喰いつく蛇に見える。くるくると滑稽に回って、一斉にこっちを向く。その瞬間、また目が覚める。ぼくを呼ぶ声がする。
 ぼくは地下回廊を歩いていた。この回廊は地下室を取り囲んで一周する。その奥に、地下室の入口がある。その中にカガシャが待っている。ぼくは歩いた。二つ目の角、水たまりを踏みつけると、弾けた水しぶきが、靴を濡らした。
 見上げてはいけない、振り返ってはいけない。
 ぼくはみっつめの角を曲がった。すると奥にろうそくの日が揺れていた。地下室の入口だった。ぼくはそこまで歩いていくと、ランタンを壁にかけた。扉を押し開けた。
 ためらってはいけない。これは何度目だろう、とふと思った。
 部屋の中は、明るかった。カガシャが待っていた。赤い蛇が、部屋を這いずっていた。
「やあ、ラトス。待ってたよ」
 カガシャは椅子から立ち上がった。マグカップの白さが目に眩しい。ぼくは向かい合って置かれた椅子に腰掛けた。
「……頼みがあってきたんだ」
「僕が呼んだから来たんじゃないのかい」
 カガシャはぼくを見下ろすと、目を細めて笑った。陶器のような肌が病的に青白い。
「知らないよ。そんなの関係ない」
「まあ、僕はどっちでもいいけどね」
 カガシャはポットから、もう一つの空のマグカップに紅茶を注いだ。透き通った赤い液体が、天井の灯りを照り返した。
「最近……悪夢ばかり見るんだ」
 ぼくはつぶやいた。カガシャは微かに笑ったようだった。
「どんな悪夢を?」
 カガシャがポットを置き、カップを差し出した。ぼくはその水面を見つめた。揺れて、反射する。赤い蛇が映る。
「言葉が出てこないんだ」
 カガシャはカップをぼくの前に置いた。
「言葉が、出てこない?」
 背もたれに背をゆっくり預けた。頼みごとをする前に、下らないことを話したくなった。
「母さんが、ぼくを呼んでるんだけどね」
 ぼくは話し始める。赤い蛇が這う部屋が、引きずられて傾ぐような気がする。灯りが点滅しているのかぼくの目が眩んでいるのか分からなくなる。
「母さんは、昔……首を吊った兄さんを見つけてから、おかしくなった。その時さ、眼が合って、その眼に睨まれたっていうんだ。涙のように血を流した眼に。この人殺しって言われたって言うんだ、その話を、毎日、毎朝、毎晩、聞かされる」
「きみの兄が死んだのは、五年前だったかな?」
「そうさ、それから五年間、毎日ね」
 背筋を這い回る悪寒に気づかないふりをして、ぼくはカップを手に取った。手が震え、力が抜けてカップが滑り落ちる。赤い紅茶を浴び、床にぶちまける。なめらかなカップが耳を劈いて、割れる。
「……それで、最後に母さんは言うんだ。お前のせいだって。人殺しはお前だ、この人殺し。この人殺し、ってね」
 殴打の音が頭に響く。バラバラに砕け散った破片。狂気は、際限なく膨らみ、爆発する。行き場のないそのエネルギーが、肉を打ち、骨を砕く。
「そうやって母さんがぼくを呼んでるのさ……」
 回廊のどこかで、何かが、壁を引っ掻いている。
「でもぼくは、言葉が出てこなくなった。それまでずいぶん、色々なことを言ったよ。慰めたり、謝ってみたりね。でも、そのうち、何も言えなくなっていった。言葉が消えていくんだ。何を言えばいいのか分からなくなって、頭の中で縺れて、喉がつかえて、どれも選べなくて、息ができなくなる。そのうち、言おうとするのも辞めたんだ」
 カガシャは聞いている。
「気づいたんだよ、そもそも、母さんはぼくの言葉、聞いてないってことにね。思い出せないくらい沢山の事を、ありとあらゆることを言ったんだ、毎日それなりに、頭を悩ませてね。でも母さんは聞いてない、何も聞こえてなかったんだ。それで母さんはぼくを呼び続ける、この人殺し、ってね」
 ぼくは暗い回廊を歩いている。
「ねぇカガシャ……、悪夢はどこにあるんだろうね? ぼくの頭の中には、兄さんの首吊り死体がぶら下がってるのさ。何十、何百、何千のね。母さんが、ぼくを人殺しって呼ぶたびに、その数が増えていった、もう、数えきれないよ」
 長い長い回廊が、暗闇の奥へ続く。
 赤い蛇の舌が覗く。蜘蛛が這う。ぼくは見ている。
「でも……実際、母さんは正しかった。……ぼくのせいさ、ぼくが殺したんだ」
 地下回廊の壁から、赤黒い液体が染み出してくる。生臭い匂いがむせ返りそうなほど充満する。
「たしかに……ぼくが殺した。真っ赤になった目が、ぼくを見てる。人殺し、ってね」
 どろどろに腐った血が、回廊を満たす。足首、膝、腿へと上がってくる。目が眩む。ランタンの明かりが消える。暗闇に閉ざされる。
 血の匂いと、首吊り死体が埋め尽くす。
「ラトス、それで頼みってなんだい?」
 パッ、と、光る。
 紅茶の水面に映った天井の明かりが、ぼくの顔を照らしている。
「頼み……?」
 明るい部屋は静かで、カガシャがぼくを待っていた。狭い部屋の、壁一面の本棚を眺めた。ジャスミンかなにかがかすかに部屋に香っていた。
「カガシャが呼んだから来たんだ」
 紅茶を一口のんだ。血の味がした。
 カガシャは笑っていた。
「いや、僕は呼んでなんかないよ」
 ぼくは顔を上げる。完璧な笑顔が張り付いたように、ぼくを見ていた。
「そうだっけ、じゃあ、ぼくが間違えたんだ」
 ぼくはカップを置いた。
 椅子から立ち上がり、ぼくはカガシャに背を向けた。ドアノブに手をかけようとして、そこに絡みつく蛇が、牙を剥いて、蜘蛛を喰うのを見た。
 蜘蛛が呑まれる。蛇が地面に落ちる。
「……間違えた?」
 無意識に呟いた。
「間違えてなんかいないよ、ラトス」
 点滅する。
 のたうつ蛇のうろこがぎらぎらと光る。僕は見下ろす。
 ゆっくりと、言葉を拾い上げる。
「ああ、そうだね……間違えてなんかいない」
 部屋中に張り巡らされた蜘蛛の糸が、蛇を捉え、縛る。喰われるのは最初から、蛇の方だった。
 ぼくは思い出し、再び振り向いた。
「そうだ……だって憎かった。ずっと……兄さんが憎くて、邪魔だった」
 歪む、廻る。
 ぼくは椅子の上に立っている。
 回廊の奥、地下室の行き止まり、粘つく蜘蛛の糸が首筋を締め付ける。
「なにも間違ってなんかない。死んで欲しかった」
 いつも何でもできて、完璧で、母さんや、他のみんなにいつも愛される兄さんが大嫌いで、憎くて、殺したくて、邪魔で、死んで欲しくてたまらなかった。
「……なのに、兄さんは」
 顔が歪むのはいつもぼくの方だ。亀裂が走る。血が滴る。赤なのか青なのか、地下なのか空の上なのか、此処がどこだからわからない。葉のない木々の森、その一本一本が呼んでいる。不自然に長く伸びた枝が、ぼくの方を向いている。
「それで?」
 カガシャはカップを傾ける。ぼくを見上げて、見下ろして、ぼくに尋ねる。
「それで……」
 ぼくは視線を彷徨わせる。
「……ぼくは……何も言えなくなった。本当は、ずっと聞いていたけど、もうそれを示せなくなった。そうしたら、母さんもだんだん、何も言わなくなっていった」
 母さんもぼくと同じように、話すのをやめた。母さんはまたぼくを忘れてしまったかのように、毎日染みついた壁を爪で引っ掻くだけになった。爪が剥がれて血だらけになっても。ガリ、ガリと壁を搔く音だけが、母さんの言葉になった。人殺し。人殺し。人殺し。ぼくを呼んでいる声。それでも、そうやって、呼んでくれることですら……。
「ある日、真夜中に目が覚めたら、母さんがぼくを見下ろしていたんだ。久しぶりに母さんがぼくの部屋に来てくれて、目が合って。嬉しかったよ」
 ぼくは口元が綻ぶのを感じていた。それと同時に、ずたずたに胸を引き裂く激痛があった。ひとつひとつの感情に、どんな名前がつけられていたのか、もうぼくには思い出せない。残された言葉は、もう僅かだった。
「ああ、そうだ……兄さんにだけは、いつも……話せたんだ、何でもね」
 地の底、黴びた血の匂いに満ちる回廊の奥に、暗闇が待っている。かつてそこに満ちていた光の全てを破壊したのは、自分の言葉だったことを思い出す。
 ぼくが言葉を失って、この地の底へ落ちたのは、その罰のような気がした。
「ねぇ、兄さん、なんで死んだの?」
 その目が見下ろす。赤い眼が見ている。腐り溶けた亡霊が、微笑んだように見える。
「忘れたのか? ラトス……」
「忘れてなんかない、ただ聞きたいんだ」
 兄さんはいつも、いつも必ず、ぼくにこたえてくれる。
 笑いかけて、どんな言葉にでも。
「お前が望んだからさ」
 すべての音は止んで、最後の灯りが消えた。
 永い悪夢がようやく、終わりを迎えようとしている。
「それなら……ぼくたちは人殺しの兄弟だね、カガシャ」
 手を伸ばした。
 暗い回廊の底へ、繋いだ手と、この星の引力が導いてくれる。

 ――

2023/11/21〚勉強と現実〛

 憂鬱だ。

 私は一体、何年も前の事にいつまでとらわれるのだろう。でもそれを手放したらもう私は私ではない。それぐらい私は今目の前のことから隔てられた場所にいる。

 目の前のこと。

 最近、哲学の勉強に嵌った。

 本当はゼミの発表の準備とか、しないといけないから、私がするべきは文学研究の論文を読んだり、作品を読んだりすることのはずなのに、私はいつもなにかの現実逃避としてしか何かにのめり込めないようだ。

 大学の勉強が、三年生の半ばになって楽しいと感じるようになった。二年生の頃は本当に辞めたくて辛かった。勉強も楽しめなかった。でも今になって。

 もっと最初から楽しめていれば、あの苦痛な時間もなかったし、今ももっと進めていたのだろうと思うと、惜しいが、こればっかりは仕方ない。

 考えることも好きだし、研究も面白いと思う。でも私は、これ以上、学問の世界には入っていけないのだろう。私は結局、私の世界にしかいられない。いつも思索には自分の勝手な想像や決めつけが混じる。いつも自分の視点から離れられず、偏った見方をするし、知識もない。何より興味の移り変わりが激しい。

 これから私はどうすればいいのか分からない。

 勉強は続けたい。研究というか、自分なりに考えることもこの先も続けたい。

 然し私の人生には、現実が欠如している。

 現実……とはいえ現実は一体……どこにあるのだろう。

 いつも愚かな自分に嫌悪が湧く。その愚かさを忘れてばかりいる自分に。

相談室にて③〈自分の人生って何なんだ〉

 カウンセラーの先生曰く、自分の人生を生きなよ、ということになるらしい。

 うん。でも自分の人生というのは、一体なんだろう。自分の人生は、結局、自分だけのものではない。切り離せない過去、数多のしがらみ、多くは「関係」によるものだとおもわれるが。

 誰とも、世界とも無関係でいられれば、たしかに自分の人生を生きられるだろう。でもそんなことはあり得ない。人と、世界と関わりながら、自分の人生を生きるということは、ムズカシすぎやしないか。だって、私は他人のことも、世界の事もあんまり好きじゃないもん。

 でも、きっと私自身が私の話を聞いても、同じように「自分の人生を生きなよ」と言うことになるだろう。人間は生まれながらにして云々カンヌン、というか、誰かが誰かの人生を決めるなどということが、絶対的であるはずはないからだ。

 だけど実際。

 自分が生きたいようには生きられないし、自分が生きたいように生きたぶんだけ、他の誰かは苦しむことになる。そして自分が生きたいように生きたぶんだけ、責める人がいる。責める自分がいる。そこには思う描くような幸福がなさそうだということは目に見えている。

 人間はうまれながらにして平等ではない。あらゆる点において不平等だ。人生の最初から最後まで、他者と他者は互いに不平等である。そう言わざるを得ない。だけどそもそも、平等であるかどうか、は問題なのだろうか。平等はただの理想で、現実は、どこまでも現実だ。

 不平等であることはそもそも世界の前提であり、問題としたり、それは違うなどといってみたりしても仕方ないのではなかろうか、しかしそれを多少ごまかそうとする試みも、全く無意味というわけではなさそうだ。

 しかし、現実として社会という場所はきわめて嫌なところだ。悪質な構造を持ち、資本主義は見えない暴力をふるう。……社会の勉強が足りないので、ここは印象の話です。社会への風評被害だったら申し訳ない。

 でも、大いに不都合があれど、それなりにうまくいくシステムだから、多分それで社会は回っているのだろう。

 しかし幸福、こと個人の心の安寧といったような面に対して、社会は驚くほど冷たいのを感じないだろうか。私は感じる。誰にも助けを受けられず、苦しんでいる人を私はたくさんたくさん見てきた。すぐ身近なところで、最終的には一切の安寧のない場所でただ苦しんで苦しんでその果に自殺してしまった人もいた。

 人を救わない世界、というものを目の当たりにしてきた。

 ……そして、人を救えない自分も。

 私はいま、正直幸せだと思っている。なにかこれ以上に望むことはないし、今死んでも別に良かった。生きていたらいたで良いこともある。しかし死んだら悲しむ人がいる。先生は私が死んだら傷つくだろう。親は、私を助けてくれないし、私を苦しめている存在でもあるが、しかし私が死んだら、やはり傷つくだろう。
 理想とは程遠い。おそらく世間一般の幸福には程遠いだろう。私には友人もいないし、恋人も居ないし、正直な気持ちを話せる人は一人も居ない。人生が辛い、生きづらい、傷が消えない、死にたくなるし、自分の存在が苦しい。でも、私は幸せだった。

 多くを望まなくても、幸せだと思える自分が居た。

 すぐそばで、一番身近な人が、傷つき、苦しんでいるのに

 私の人生は罪悪感に支配される。

 自分の人生ってなんだろう。

 ただ私は、周りの人みんな幸せで居てほしかった。その前提があれば、私は自分の人生を生きられただろう。だがそうではなかった。でも私は、周りの人を幸せにはできない。せいぜい、……。

 ここに居たのが自分ではなければよかった。

 自分は役に立たない。もっと役に立つ良い子だったら。環境にもっと適応した存在になれればよかった。パズルのピースがはまるように、全てがうまくいくような、そんな人間だったらなあ。

 そんな馬鹿げた理想が、これまた馬鹿げた自傷行為につながるのも、幼稚ではあるのだけれども、まあつまり、結局自分は、そういう人間だったということだ。

 自分の人生を生きるということは、すでにやっているとしか言いようがない。

 私は別に誰のために生きているわけでもない。ただ、人に与えられたものに苦しんでいることは確かだが、それは自分の人生を生きていないということではない。

 そういう自分だから、結局、いつまでも罪悪感からは逃れられないのだ。

 先生にはなんと言ったら良いのか分からない。

 然しカウンセラーという存在は、「判断をしない」ということを、話していると実感する。私がなにか言っても、それは正しいよとか、間違っているよとか、基本的にはそういうジャッジをしない。だから、否定されるのではないかとか、それはおかしいと指摘されるのではとかいったことを、恐れる必要のない相手なのだ。とりあえず何でも、話してみていいのだ。自分でそうとわかるまで回数は必要だったが。

 一方、判断はいつも自分がしなければならない。誰かに判断してもらいたいと思っても、そういうわけにはいかないのだ。カウンセラーはそれをしてくれないかわり、それをしないでくれる。といったところか。(変な良い方だが)

 憂鬱なときには判断することもまた苦痛だが、そういう時に手助けをしてくれるのがカウンセラーというか。判断出来ない、からしてもらおう、ではなくて、手伝ってもらおう、と思えると良いのかなと思った。

 だからある意味、辛いね。

 生きていると苦しいけどでも、他者が「してくれる」ことに、目を向けたい。
 だけど、どうやって返したら良いのだろう。

 分からない。